"ピロリ菌"について一緒に見てきましょう!
※現役エリアマネージャーの薬局薬剤師が記載していますので、信頼してお読みください
ピロリ除菌の処方が来たけど、普段扱ってないとどんな処方内容で、注意点や、保険適応の有無などは忘れがちになりますよね。
そんな薬剤師の方々や、ピロリ菌について知りたい、実際にピロリ菌の除菌をすると言われた患者様に有益情報をお伝えしたいと思い、この記事を書きました♪
こんな方に特に読んでいただきたい
- 実際にピロリ除菌を行う(行っている)患者様
- ピロリ除菌の処方箋を受け取った(受け取る予定)が、知識が曖昧な薬剤師さん
- 単純に興味深々な勉強熱心な方
この記事で得られること
ピロリ菌について、ピロリ菌の検査〜治療完了までの流れ、その内容・注意点などがこの記事だけで丸わかり!
つまり、有意義な時間を得られます!!
ピロリ菌 について
ヘリコバクター・ピロリという名前の菌です。
前進だけでなく、バックも出来る優等生!
さすがに飛べませんよ〜!笑
子供の頃に不衛生な水を飲むことや、ピロリ感染している大人から箸などを介して感染ってしまうことなどで感染し、一度感染するとその後ずっと胃の粘膜に住み着いてきます。
多くの場合は後述する除菌をしないとずっと住み着きますね。
家賃払え〜!
胃って間取りで例えると1ルームだよね。
どうしてピロリ菌が住み着くと良くないかというと、胃炎、胃潰瘍、胃がんになるリスクが高くなってしまうからなんです。
でもさ、胃酸って強い酸だよね?
なんでそれでも生きていられるの?
それはズバリ、ピロリ菌がウレアーゼという酵素を出すことで生き延びているんです。
ピロリ菌は酸に弱いです。しかし、ウレアーゼという酵素によって、胃の中の尿素を分解し、アンモニア(アルカリ性)に変え、胃酸を中和することで最適な環境を自ら作り上げているんです。
ピロリ菌って凄いじゃん!
イノベーションだね!
検査方法
では、ここからは具体的な検査方法を記載していきます。
ほとんどの場合、自覚症状がないので自力ではまず見つからないです。以下の方法で医師に見つけてもらいましょう。
胃カメラを使うパターンと使わないパターンの2つに分かれます。
胃カメラを使うパターンは3つ。
生検と言いますが、胃の粘膜を一部採取することで感染の有無を確認していきます。
- 培養法:組織を培養する方法。一番正確だが、1週間くらい時間がかかってしまうのがデメリット。
- 鏡検法:顕微鏡で観察する方法。
- 迅速ウレアーゼ試験:試薬に採取した組織を入れ、色の変化で感染の有無を判断する方法。あまり時間が掛からないのがメリット。
胃カメラを使わないパターンも3つ。
比較的簡単で、患者様の負担も少なくて済むが、生検よりも精度が劣ると言われています。
- 血清抗体法および尿中抗体法:血液や尿を用いて行う。簡単なので、検診や若い方に特にお勧めの方法。しかし、除菌判定には向いていない。
- 便中抗原法:便を用いて行う。除菌判定にも使える。
- 尿素呼気試験:診断薬を飲んだ後、吐いた息の成分を調べ、ウレアーゼ活性を調べる方法。1週間程度で結果が出る。除菌判定に多く用いられている。PPIやタケキャブなど胃酸を抑える薬等を服用している場合等は偽陰性を示す場合がある。
偽陰性とは、本当は陽性(まだ菌がいる状態)なのに、間違って陰性(除菌成功したよ)と判定されることです。
ピロリ菌 が検出されてから除菌判定までのスケジュール
- 上記の検査でピロリ菌感染が認められる
- 一次除菌薬を1週間服用する
- 一次除菌薬服用後、8週間以上(4週間以上の医療機関もあり)空けて、除菌判定 ※ここで陰性なら治療完了
- (陽性の場合は)二次除菌薬を1週間服用する
- 二次除菌薬服用後、8週間以上(4週間以上の医療機関もあり)空けて、除菌判定 ※ここで陰性なら治療完了
- (陽性の場合は)三次除菌へ
二次除菌終了時点で約95%の方が除菌成功すると言われています。
また、除菌薬服用後少なくとも4週間空ける理由は『4週間経つとほとんどの方で一度除菌して減ったピロリ菌の数が回復するので、本当に除菌できているか確かめられる』ためです。
保険適応について
ピロリの検査や除菌は下記の診断名が無いと保険適応外となり、自費となります。
- 慢性胃炎(胃カメラでの診断が必要)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(胃バリウム検査もしくは胃カメラでの診断が必要)
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
- 早期胃癌に対する内視鏡的治療後
治療については後述する一次除菌と二次除菌までは保険適応ですが、三次除菌からは保険適応外となります。
ピロリ菌 除菌に使われる具体的な薬剤
一次除菌:PPI(またはボノプラザン)+クラリスロマイシン400mg(または800mg)+アモキシシリン750mg 1日2回 7日間
二次除菌:PPI(またはボノプラザン)+メトロニダゾール250mg+アモキシシリン750mg 1日2回 7日間
三次除菌:医療機関により処方内容が変わる印象があります。アモキシシリンからシタフロキサシンへ変更して処方する医師が多い印象です。
ちなみに、PPIやタケキャブは高用量で服用します。
例:)ボノプラザンなら20mgを1日2回
ランソプラゾールなら30mgを1日2回など
除菌効率はボノプラザンが一番高いという報告があがっています。
注意点
ヘリコバクター・ピロリ治療ガイドラインによれば、クラリスロマイシン400mgと800mgで効果に差は無いようで、非喫煙者では副作用予防の観点から400mgが推奨、喫煙者では800mgの方が効果が高いとされています。
添付文章では、『クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量するこ とができる。ただし、1回400mg(力価)1日2回を上限とする。』という表現になっています。
二次除菌で使われるメトロニダゾールは飲酒に気をつけないといけません。
メトロニダゾールがアセトアルデヒド脱水素酵素を阻害するため、二日酔いの原因であるアセトアルデヒドが分解されずに溜まってしまうからと言われています。ほてりや悪心・嘔吐などが出やすくなります。
基本的には体外に出るまで3日かかると言われているので、服用開始から服用後3日間の計10日間は禁酒しましょう。
ちなみに、奈良漬けやエリキシル剤、化粧品にもアルコールが含まれているので気をつけておかないといけませんね。
PPIやタケキャブを定期薬として服用している方も多いと思いますが、除菌判定前の少なくとも2週間(出来れば4週間)の休薬が必要です。
理由は、PPIやタケキャブにはピロリ菌の静菌作用があると言われているからです。
1日2回朝夕食後で処方されることが多いですが、食事の影響を受けない薬なので食前でも構いません。その場合はコップ一杯の多めの水で服用がお勧め。
もし飲み忘れたら、基本的には次回服用までに5時間以上空けることが出来れば、すぐに服用しましょう。空かなかったら1回分飛ばしましょう。
どんな薬でも同じことが言えますが、絶対に一度に2回分を飲まないように!
一部の胃薬、OTCでもピロリ除菌判定で偽陰性(本当は陽性なのに陰性と結果が出てしまうこと)になるものがあります。自己判断で服薬しないように気をつけましょう。
まずは医師または薬剤師に相談してね〜!
除菌薬の服用により、下痢をされる方が多くいらっしゃいます。(抗生物質を多量に飲むようになるので仕方無いといえば仕方ないですが。)
脱水には十分注意をして、こまめな水分補給を心がけましょう。
クラリスロマイシンで口の中が苦いなどの味覚障害が現れることもありますが、服用後に改善されると言われています。
メトロニダゾール服用で、尿の色が暗赤色に変化することがありますが、薬の影響なので心配いりません。
自己判断で中止したり、飲み方を変えたりすると除菌効率が下がってしまいます。
ある程度の下痢や副作用なら我慢して医師の指示通り飲みきり、どうしても飲み続けるのが困難だと判断したときのみ医師に相談しましょうね。
今回は以上となります。
きちんと服薬すること。
また、きちんと服薬してもらうためにしっかり指導することを行い、除菌成功に繋げましょうね。
ではまた次の記事でお会いしましょう♪
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